歯を守り、健康と笑顔を
保つ歯周病治療
歯が健康であることの喜びや幸せは、歯を失って初めて気付くものです。
固い食べ物も軟らかい食べ物も気にすることなく食べられるのは健康な歯があるからこそで、色々な味覚を楽しむことにも繋がります。
現在では“食事を楽しむこと”は健康長寿、つまり自立した老後を送る上でも大切な要素とされています。
当院では患者様の将来の健康に重点を置いた歯周病治療に取り組んでいます。
歯のグラグラや歯肉からの出血、歯肉がブヨブヨするなどの症状が見られる方はお気軽にご相談ください。
歯周病は虫歯と同じく細菌による感染症で、歯を支える歯肉・歯根膜・歯槽骨などの周囲組織が破壊され、最終的に歯を失うことになる恐ろしい病気です。
日本人の“歯を失う原因No.1”とされており、8020推進財団の行った「永久歯の抜歯原因調査」では、歯周病が原因で抜歯した方が全体の約42%を占めています。
また、厚生労働省が2012年6月に公表した「歯科疾患実態調査」では、成人の75~85%の方が歯周疾患を有していると報告されています。軽度、重度の歯周病など程度の差はありますが、これからも歯周病で歯を失う方が増え続けることは間違いないでしょう。
歯周病の直接の原因は細菌ですが、実際には様々な要因が関係して起こります。
例えば、疲労が蓄積すると自律神経のバランスが崩れ、免疫機能が低下して体調を崩すことがあります。体調が悪いと病気を受け入れやすくなり、歯肉の腫れや口内炎、風邪をひきやすくなります。
歯周病も同様で、生活の乱れや過度なストレスなどによる免疫機能の低下が影響します。体調を崩した時に歯肉の腫れる方がいますが、体調の良い時は免疫機能が働いているため、歯周病の症状が抑制されているに過ぎないのです。
健康のためには食生活・睡眠・ストレス・禁煙など日頃の生活習慣に気遣うことが大切です。
これは歯周病だけでなく多くの病気の予防においても言えることです。
虫歯菌や歯周病菌などの微生物は、気道や歯肉の毛細血管を通して体内に侵入し、様々な病気の要因や原因になることが問題視されています。
健康な口腔環境を維持することは、下記の病気を予防することにも繋がります。
糖尿病 | 血液中の血糖値が異常に高まる糖尿病は様々な合併症をひき起こす危険性を持ちます。歯周病と糖尿病は互いの治療効果を妨げ合う関係でもあるため同時治療が望ましく、医科歯科の連携も大切です。 |
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誤嚥性肺炎 | 唾液や飲食物とともに微生物が肺に入る(誤嚥)ことによって起こる肺炎です。高齢の方に多い病気で充分な注意が必要です。 |
細菌性心内膜炎 (感染性心内膜炎) |
毛細血管より進入した微生物が、心臓の弁や内膜、心臓の筋肉に感染して起こる病気です。 |
虚血性心疾患 (心筋梗塞・狭心症) |
血液中に進入した微生物が原因となって、心臓の冠状動脈が損傷し、血栓が形成されることがあります。 この血栓によって血流が滞ると心筋梗塞や狭心症の危険性が出てきます。 |
内臓疾患 | 血管より進入した微生物が腎臓や肝臓に感染して起こる疾患です。 糖尿病との合併症も懸念されます。 |
早産や低体重児出産 | 歯周病の時に起こる免疫反応が早産を誘発することがあります。 妊産婦の口腔ケアや歯周病予防は、極低出生体重児(未熟児)の出生率を下げるとの報告もあります。 |
口腔環境が悪化しているにもかかわらず、不衛生な状態を放置していると、歯周病菌にとって生息しやすい環境である、バイオフィルムというヌルヌル、ネバネバした塊を生成します。 バイオフィルムは細菌の温床となり、歯周病菌は強い毒素によって周囲の歯肉をより攻撃するようになり、炎症を拡大させていきます。
バイオフィルムは、表面が非常に強固で、抗菌物質や歯磨きでは除去できませんから、歯科医院で専門的なクリーニングを行い除去しなければなりません。
歯周病は症状によって歯肉炎と歯周炎に分類されます。
歯周炎は歯肉炎の症状がさらに悪化したもので、歯槽膿漏(しそうのうろう)とも呼ばれています。
歯肉炎 |
歯肉溝(歯と歯肉の境目の溝)にバイオフィルムが付着して炎症が起こり、歯周ポケットが形成された状態です。周囲の歯肉が赤くなり出血することもありますが、自覚症状はほとんどありません。 適切な歯磨きと歯科医院での定期的なメインテナンスが必要です。 |
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歯周炎 (歯槽膿漏) |
歯肉炎は歯肉に限局された疾患ですが、歯周炎の症状には歯を支える歯根膜や歯槽骨の破壊が加わります。 歯肉からの出血や膿、歯の動揺(グラグラ)も大きくなります。 歯が抜けないよう守っていくためには、本格的な歯周治療が必要です。 |
歯と歯肉の隙間を歯肉溝と言います。
健康であればその深さは2mm程度ですが、歯周病になると、歯肉溝に入り込んだバイオフィルムによって歯周組織が破壊され溝が深くなっていきます。
この深くなった歯肉溝は「歯周ポケット」と呼ばれ、歯周病の進行状態を見極めるバロメーターの一つとなっています。
重度の歯周炎になると、歯周ポケットの深さは10mmにもなることがあります。
歯周病は“サイレントディジーズ”と形容されるくらい、自覚症状を感じるまでに時間がかかる病気です。
「気づいた時にはかなり進行していた。」といった状況は多くの方が体験されていることでしょう。
症状の軽い初期の歯周病は「あれっ? 何か変だなぁ」といった違和感にしか感じられないかもしれませんが、歯周病は確実に進行しています。
取り返しのつかない重度の歯周病になる前に、ぜひご相談ください。
歯肉炎のように歯肉の炎症で留まっているうちは、早期の治療により完全な治癒が見込めるでしょう。
しかし、歯周炎になると歯槽骨の破壊(吸収)が既に起こっているため、健康な状態まで回復はできても、失った歯槽骨を歯周炎になる前の状態に戻すことはできません。
歯肉炎 歯周ポケットの深さ 3mm以内 |
歯周病菌が歯肉溝に侵入してバイオフィルムを形成し、歯周ポケット化しています。 適切な口腔ケアと歯科医院での処置によって、健康な状態まで回復できます。 |
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軽度歯周炎 歯周ポケットの深さ 3~5mm程度 |
歯周病の悪化に伴ない歯周ポケットはさらに深くなり、歯根深部への歯石の付着が始まります。歯肉の炎症も肥大し、出血や排膿といった自覚症状も現れ始めます。 歯を支える歯根膜や歯槽骨の破壊はこの頃から少しずつ始まります。 |
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中等度歯周炎 歯周ポケットの深さ 4~7mm程度 |
歯周ポケットがさらに深くなり、歯槽骨の破壊が進んで歯がグラつき始めます。 ブヨブヨとした歯肉からの出血や排膿が頻繁に見られるようになり、口臭もきつくなってきます。 |
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重度歯周炎 歯周ポケットの深さ 6mm以上 |
歯槽骨のさらなる破壊によって歯のグラグラはさらに大きくなり、歯根露出も顕著になります。 歯を残せる可能性はまだありますから、まずは早急に歯科医院へ行きましょう。 |
当院では初診時と定期検診時に歯周病検査を行っております。自覚症状がないから歯周病ではない、というわけでは決してありません。歯周病はギネスブックに、“人類史上最も感染者の多い感染症”と掲載されているほどなのですから。
歯周病は気が付かないうちに確実に進行してしまいますから注意が必要です。
日頃のお口のケア方法について詳細をお聞きします。
歯周病は生活習慣と深い関係がありますから、飲酒や食生活、喫煙状況、仕事によるストレスなどについてもお聞きします。
歯周病になると歯肉溝(歯と歯肉の間の溝)が深くなり、歯周ポケットができます。
プローブという器具を用いて歯周ポケットの深さを測定し、その深さから歯周病のおおよその進行状態を確認します。
歯周病により歯を支える周囲の骨が溶けてくるため、進行するほど歯のぐらつき(動揺)は大きくなっていきます。動揺度が「3度」の場合には抜歯の可能性が高くなります。
1本1本の歯をピンセットで水平方向、垂直方向に動かして動揺度を調べます。
歯を支える歯槽骨の状態や歯周組織の炎症状態を把握するため、レントゲン撮影は必ず行います。
歯周病は進行すると複数の歯に及ぶため、レントゲンを用いて進行度合いを確認します。
歯周基本治療とは、症状の程度に関係なく治療開始時に実施する基本的な治療です。歯肉炎や軽度の歯周炎の場合は、炎症の抑制や進行を止める目的で行います。
さらに症状が進行した重度の歯周病の場合は、症状の緩和や応急処置を目的として行います。
歯科医院だけで口腔内をどれだけ衛生的にしても、ご自宅でのケアが不十分では歯周治療の効果は望めません。
TBIでは実際に患者様に歯磨きをしていただき、磨きにくい場所、磨き残しなどを丁寧に調べます。その結果をもとに適切な歯磨き方法と歯磨きの欠点をご説明します。
歯科医院には毎日通えませんから、ご自宅でのケアを怠ってはいけません。
スケーリングでは専用の器具や機器を用いて、歯石や歯垢をきれいに除去します。
歯石は歯垢が石灰化したもので、歯に強固に付着しているため歯磨きでは落とすことができません。
歯周病の治療としてだけではなく、健康な口腔状態を維持するためにも定期的に行いましょう。
スケーリングの後、歯根表面に付着したバイオフィルムの除去や、歯周病菌に侵されたセメント質・象牙質を除去し、歯根面を滑らか(滑沢)な状態にしていきます。
炎症部分を取り除くことで、バイオフィルムの再付着を防ぐとともに、健康的な歯肉への再生を促します。
重度の歯周病で歯が動揺(グラグラ)した状態では普段の生活にも支障をきたします。
このような場合、レジン(プラスチック)やワイヤーにより、応急的に周囲の歯と固定する処置(暫間固定)をします。この処置により、食べ物を噛む圧力やブラッシングの刺激にも耐えられるようになります。
歯周治療ではより多くの歯を残すために、その障害となる要因を応急的に取り除く必要があります。状態によっては周囲の歯への影響を考慮して抜かざるを得ない場合もあります。
症状の軽い歯肉炎や初期の歯周炎であれば、これらの治療で改善を見込める場合もありますが、ご自宅でのホームケアをしっかり行うことが必須条件になります。
歯が抜けてしまってから後悔する前に、日頃から歯を大切にする生活を送りましょう。